日本では弥生時代から稲作を中心とした農耕が生活を支えてきました。その農業は身近な森林=里山に大きく依存してきたといえます。
人は森林を切り開き家を建て田畑を作り、森林資源を建築用材、薪炭、肥料として利用することで農業、言い換えれば人間活動を維持してきたのです。このような人間活動が深く関与するほど自然植生は大きく影響を受けます。
里山に多く見られるアカマツやコナラ・クヌギ・クリなどの落葉広葉樹は先駆種と呼ばれ、森林ができる最初の段階なのです。自然の遷移(せんい=森林を構成する樹種が変化すること)に任せると日陰に強い樹種に負け、やがて照葉樹林など(地域・標高によって異なる)に変わっていきます。人間活動が関与することで、この遷移をとめてきた森林が里山なのです。
森林利用の歴史は大変古く、縄文時代にはすでにクリやウルシの植林がされ利用されていたようです。
やがて人口の急激な増加による建築用材の調達のため乱伐が繰り返されるようになり、日本各地で森林破壊が進行したことで山林火災や台風被害が頻発し、何度も森林破壊と保護政策が繰り返され、江戸時代には徳川幕府による森林の厳格な保護政策が採られるようになりました。
保護政策により回復を果たした里山ですが、明治維新前後の乱伐や太平洋戦争時の軍事重要と戦後復興に伴う過度な伐採により日本各地の森林が禿山になってしまいました。
このように里山では乱伐と保護が繰り返されてきましたが、昭和30年代の燃料革命による化石燃料や化学肥料の普及により、利用されなくなった里山は人の手が加わらなくなったことによる植生の変化で新たな危機的状況にあるのです。
人間活動の関与によって遷移をとめられてきた雑木林には、その環境に適応した多くの動植物が集まり里山生態系とも言われる独自の環境を作りました。
雑木林を構成する落葉広葉樹は冬に葉を落とすので林内に十分な日照が入ります、このことは林床に多様な植物を招き入れることになるのです。雑木林にはカタクリに代表される春植物や秋の七草として親しまれている・キキョウ・ナデシコ・オミナエシなど花をつける植物が多く、蝶などの昆虫をはじめ食物連鎖の頂点に立つフクロウなどの猛禽類も雑木林を生活の場としています。また山菜やきのこといった山の幸が多いのも雑木林です。言い換えると落葉広葉樹の雑木林でしか生息できない種なのです。
生態学的調査によると、管理された雑木林は自然林の約2倍もの生物多様性があるといわれ、絶滅危惧種の約半数は里山が生息域なのです。
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